母に奉げる詩(2)
15 閑話
(3)
母も60歳で死んで逝った
風邪をこじらせて
救急車で
病院に運び込んだ
3日目のことだった
点滴だけの対応で
付いた医師はインターンだった
どうして死んだか
今もわからない
だが 僕も
病室で母が死ぬ時
母の手を握って
不幸ばかりを考えていた
母が長生きしても
幸せは来ないとか
つらいことばかりだとか
僕の人生に照らして
暗澹と考えた
だから…
母の手が
力なく離れて行ったのを
僕は
強く握り返す
ことさえできなかった
離れて行く
母の魂を
呼び止めもしないで
僕は
自分の不幸に浸って…
母は離れた位置から
僕を見つめて
どんなに情けなかっただろう
自分の事で
悩むばかりの
馬鹿な息子を見つめて
母はあきらめて
自分から逝ったのだ
(4)
夕暮れて
色のない風の中を
父が一人
鍬をかついで行く
家の方角でない
真反対の
畑野の向こう
黒い杜に向かって去って行く
茅葺の家に
僕が眠っている
祖父も祖母も死んでしまった
父が帰って来ないと
僕の枕辺で
母が呟く
死んだ父の夢を見たと僕が言い
杜の方へ行ったと母に教える
すると母が
淋しい笑顔を見せて言う
○○○○と
ああ…
母も死んでいる
僕は気付く
涙があふれて
胸が締め付けられる
茅葺の家には
誰も居ない
僕だけが寝ているのだと
僕は目が覚める
妻が傍の布団で静かに眠っている
ここは街にある僕の家だ
何もかもが分かってしまう
すると
死んでしまった人達は
表情を失くして消えて行き
茅葺の家が
灰のように崩れて
散って行く
母も60歳で死んで逝った
風邪をこじらせて
救急車で
病院に運び込んだ
3日目のことだった
点滴だけの対応で
付いた医師はインターンだった
どうして死んだか
今もわからない
だが 僕も
病室で母が死ぬ時
母の手を握って
不幸ばかりを考えていた
母が長生きしても
幸せは来ないとか
つらいことばかりだとか
僕の人生に照らして
暗澹と考えた
だから…
母の手が
力なく離れて行ったのを
僕は
強く握り返す
ことさえできなかった
離れて行く
母の魂を
呼び止めもしないで
僕は
自分の不幸に浸って…
母は離れた位置から
僕を見つめて
どんなに情けなかっただろう
自分の事で
悩むばかりの
馬鹿な息子を見つめて
母はあきらめて
自分から逝ったのだ
(4)
夕暮れて
色のない風の中を
父が一人
鍬をかついで行く
家の方角でない
真反対の
畑野の向こう
黒い杜に向かって去って行く
茅葺の家に
僕が眠っている
祖父も祖母も死んでしまった
父が帰って来ないと
僕の枕辺で
母が呟く
死んだ父の夢を見たと僕が言い
杜の方へ行ったと母に教える
すると母が
淋しい笑顔を見せて言う
○○○○と
ああ…
母も死んでいる
僕は気付く
涙があふれて
胸が締め付けられる
茅葺の家には
誰も居ない
僕だけが寝ているのだと
僕は目が覚める
妻が傍の布団で静かに眠っている
ここは街にある僕の家だ
何もかもが分かってしまう
すると
死んでしまった人達は
表情を失くして消えて行き
茅葺の家が
灰のように崩れて
散って行く
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